コラム
COLUMNワキガで急に脇が臭くなったり、逆に急に治ったりすることはある?
脇の臭いが気になるという方は多いでしょう。ワキガは急になったり、急に治ったりするのでしょうか。
本記事では、ワキガの原因や臭いが強まったり弱まったりする要因、対処法や治療法について解説します。ワキガのセルフチェック方法も紹介しますので、ワキガでお悩みの方や、脇の臭いが気になる方は参考にしてください。
急にワキガになる?
脇の臭いが急に強くなったりすると、ワキガになってしまったのではないかと考える方もいるかもしれません。
脇の臭いのお悩みをしっかりと解消するためにも、まずはワキガについての正しい知識を身につけましょう。
ワキガは急になったり急に治ったりしない
ワキガは急に発症したり、その逆で突然治るということはありません。これは、ワキガは遺伝的な要素など体質によるものだからです。
日によってワキガが気になりやすかったり、そうでなかったりといった違いが出ることはありますが、根本的な部分で体質が急激に変化し、ワキガになったり治ったりするということはありません。
ワキガの原因
ワキガは体質によって生じるものと上述しましたが、具体的にはアポクリン汗腺という、脇の周囲や耳、鼠径部などに存在する汗腺が関係しています
アポクリン汗腺は、運動をしたときや暑いときに出る水分の多いサラサラとした汗ではなく、タンパク質などを多く含むネバネバとした汗を分泌します。
アポクリン汗腺から出る汗は皮膚のさまざまな菌に利用され、強い臭いを発する物質が作り出されます。これがワキガの原因となります
アポクリン汗腺が活発に働くかどうかは体質によって大きく異なり、遺伝的な影響を強く受けます。
日本人はアポクリン汗腺が活発な体質の人が少なく、全体の10%程度といわれているのに対し、欧米人は70~90%、アフリカ系人種では100%の人が、アポクリン汗腺の活発なワキガ体質であるといわれています。
>>ワキガの原因やメカニズム、症状を抑える方法や予防法、治療の内容を詳しく解説
急に脇が臭くなったと感じるケース
上記のように、遺伝的な要素が強く影響するワキガは、急になったり、治ったりするものではありません。
一方で、発育に伴う身体の変化や生活環境の変化によって、脇の臭いが急に気になるという可能性はあります。
脇が急に臭くなって「ワキガになった」と感じるようなケースは以下の通りです。
思春期によるアポクリン汗腺の発達
ワキガ体質は遺伝的な要素が強く、生まれつきワキガ体質の素養を持っているかどうかが決まるものですが、実際に強い体臭としてあらわれてくるのは思春期以降の時期です
これは、ワキガの原因であるタンパク質や脂質の多く含まれた汗を分泌するアポクリン汗腺が、性ホルモンの影響で発達して活発に汗の分泌を行うようになるためです。
思春期に訪れる「第二次性徴」で性ホルモンの分泌が行われるようになるまではワキガの症状が発生せず、思春期にアポクリン汗腺が発達することで、ワキガの症状が出てくるようになります
また、思春期は周囲から見た自分の姿が特に気になりやすい時期でもあるため、それまで気にしていなかった自分の体臭を自覚すると「周囲から臭いと思われる」といった不安が強くなりやすく、症状を重く捉えてしまいやすい傾向もあります。
>>ワキガになりやすい人の特徴は? 何歳くらいから症状が出やすいのかなどを詳しく解説します
ホルモンバランスの変化
ワキガの原因であるアポクリン汗腺は性ホルモンの刺激によって活発になるため、ホルモンバランスが変化することで臭いが強くなったり、弱くなったりします
思春期から20代前半頃が最も強いニオイとなりやすく、それ以降は徐々に軽減していく傾向ですが、女性の場合は40代に入ると更年期によってホルモンバランスが崩れることが多く、これによってアポクリン汗腺が活発になるケースがあります
また、女性は生理(月経)や妊娠、出産によってもホルモンバランスが大きく変化するため、これに伴ってアポクリン汗腺が活性化し、臭いが出てくるということもあります。
ストレスの影響
アポクリン汗腺からの汗は、ストレスを感じると分泌が促進されます。
そのため、生活習慣の変化などでストレスが蓄積される事で臭いが強くなってしまう場合があります
体臭が強くなったと感じることでストレスを感じ、さらに臭いが強くなってしまうという悪循環も考えられます。
ケア方法の影響
ワキガの臭いを気にして過剰なケアを行うことも、臭いを強くしてしまう可能性があります
皮膚にはさまざまな常在菌が生息しています。臭いは汗そのものが発しているのではなく、皮膚の常在菌が汗を分解することで強い臭いの元となる成分が作り出されます
常在菌は体調などによってバランスが変化しますが、デオドラント商品の使用などによってもバランスが崩れることがあります
常在菌の中には、身体にとって悪影響のある菌の繁殖を防いでくれる菌もありますが、過剰な除菌などのケアによって数が減ることがあります。その結果、嫌な臭いを作り出す菌が繁殖しやすい状態になり、臭いが強くなる可能性が考えられます。
生活習慣の影響
食事や睡眠といった生活習慣の影響によっても、臭いが強くなる可能性があります。
例えば、糖質や脂質の多い高カロリーな食事や、偏った食生活はアポクリン汗腺からの汗の分泌を促進するため、臭いを強める要因となります
一人暮らしを始めるなど生活環境の変化などによって食事内容が変わり、急に臭いが強くなるといったケースも考えられるでしょう
そのほかにも、睡眠不足によるホルモンバランスの変化、喫煙や飲酒による変化、運動不足による代謝の低下なども、急に脇が臭くなったと感じる要因になり得ます。
病気や薬の影響
一部の病気や薬の影響で、脇の臭いが強くなるケースがあります。
例えば、甲状腺疾患のバセドウ病では、過剰な甲状腺ホルモンの作用によって汗や皮脂の分泌が促進されます。分泌物から臭いの原因となる成分が作り出され、汗が蒸発する際に臭いの成分が周囲に拡散するため、臭いが強くなります。
指摘などで臭いを自覚したため
自分の体臭というのはなかなか気が付かないものです
家族や友人から体臭を指摘されることで臭いを自覚し、臭いが気になり始めるというケースがあります。一度臭いを自覚することで気になり、不安からさらに臭いが強くなっているように感じる可能性があります。
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急にワキガが治ったと感じるケース
急にワキガになったと感じることがある一方で、急にワキガが治ったと感じるケースもあります
例えば、食生活や生活習慣による影響によるものです。
偏った食事など、栄養バランスの乱れによって急に脇が臭くなったと感じる場合があると上述しましたが、その逆でバランスのよい食事で汗や皮脂に含まれるタンパク質や脂質の量が減り、臭いが落ち着くことがあります
また、飲酒や喫煙など、血行を悪くする生活習慣を改善した場合も、脇の臭いが落ち着く可能性があります
ホルモンバランスの変化によって、臭いが改善されるケースもあります。
アポクリン汗腺は性ホルモンの影響で分泌が促進されるため、ストレスで男性ホルモンの働きが強くなるなどホルモンバランスが崩れると、臭いが強くなります。
適度なストレス解消や、十分な睡眠などでホルモンバランスが整うことで、急にワキガが治ったと感じることもあるでしょう
妊娠や出産といった急なホルモンバランスの変化でワキガが気になりだした方であれば、出産後の変化によって、急にワキガが治ったと感じるケースもあります。
なお、急な変化ではありませんが、更年期に性ホルモンの分泌が減少していくと、アポクリン汗腺の働きが弱まって臭いは落ち着いていきます。
ワキガのセルフチェック方法
ここからは、ワキガのセルフチェック方法を紹介します。自分の臭いが気になるという方はチェックしてみましょう
【ガーゼを使用するセルフチェック方法】
・清潔なガーゼを用意し、ガーゼを脇に挟んで数分間軽く運動する
・そのガーゼの臭いでワキガの程度を測る
【ガーゼを使用したチェック方法の判断基準】
・ガーゼが臭わないまたはわずかに臭う:ワキガの可能性は低い
・ガーゼを鼻に近づけると臭う:軽度ワキガの疑い
・ガーゼを鼻に近づけなくても臭う:中度ワキガの疑い
・手に持っただけで臭う:重度ワキガの疑い
このテストは医療機関でワキガの診断を行う際にも行われます。
自分では臭いの程度がわかりにくいと感じるようであれば、医療機関で相談してみるとよいでしょう
また、ワキガ体質かどうかのセルフチェック方法も紹介しますので、下記のリストに当てはまる項目があるか確認してみましょう。
当てはまる項目が多い場合、ワキガ体質の可能性が高いといえます
- 耳垢が湿っている(耳垢が乾燥していない)
- 両親のどちらかがワキガ体質である
- 衣服の脇部分に黄色いシミができる
- 脇に白い粉が付く
- 脇毛の量が多い
- 汗をかきやすい
ワキガの原因であるアポクリン汗腺は耳のなかにもあり、アポクリン汗腺が発達している方は耳垢が湿りやすくなります。
そのため、耳垢が湿っているかどうかはワキガ体質を判断するポイントといえます。
また、ワキガ体質は遺伝によって決まるため、両親のどちらかがワキガ体質である場合は、その体質を受け継いでいる可能性があります
衣服に黄色いシミができたり、ワキに白い粉が付いたりするのは、アポクリン汗腺からの分泌物による影響が考えられます。常在菌のバランスの変化や生活習慣の変化などによって、臭いが強くなる可能性が考えられます。
アポクリン汗腺は毛穴に存在するため、脇毛の量が多いということは、アポクリン汗腺が多いと考えることができます
なお、汗が蒸発する際に臭いが周囲へと拡散されるため、汗をかきやすいと体臭が周囲に広がりやすいといえます。ワキガの方の多くは多汗症も併発しているとされているため、汗をかきやすいこともワキガ体質かを判断する一つのポイントといえるでしょう。
>>ワキガの人の特徴とは? 臭いや体質の特徴からケア方法まで詳しく解説
急に脇が臭くなったときの対処法
急に脇が臭くなったと感じたときは、下記のような対処を行うことで臭いを改善できる可能性があります。
ストレス管理を行う
ストレスは男性ホルモンの働きを優位にすることでアポクリン汗腺を活性化させ、臭いを強くさせる要因となります。
趣味を楽しんだりマッサージを受けたりといった、ストレスを解消できるような取り組みをするとよいでしょう
十分な睡眠はストレスケアにも有効であるため、睡眠不足の方はしっかりと眠るようにするのも有効です。
また、ワキガの臭いを気にしすぎることもストレスの要因となるため、過剰に気にしないようにすることも大切です。
ケア方法を見直す
過剰な制汗剤の使用や洗いすぎなど、常在菌のバランスを壊してしまうようなケアは、かえって臭いを強めてしまう可能性があります。
適切なケアかどうかの判断が難しいという方は、医療機関で相談してみることをおすすめします。
食生活や生活習慣を見直す
糖質や脂質に偏り、ビタミン類などが不足している食生活は、ワキガの臭いを強める原因となります。栄養バランスのよい食事を心がけることも、ワキガ対策としてできるケアの一つです。
また、飲酒や喫煙の習慣がある方は、禁酒や禁煙に取り組むことも、臭いの軽減につながります。
適度に運動して汗を流す
適度な汗をかくことは、ワキガの臭いを軽減することにもつながります。
運動不足で代謝が低下してしまうと臭いが強くなりやすいので、適度な運動習慣を取り入れるようにしましょう。
クリニックで相談する
しっかりと臭いを改善させたい場合は、クリニックで専門的な診療を受けるという方法がおすすめです。
クリニックでは、脇汗を抑えるための専門的な薬や原因となるアポクリン汗腺の除去など、一人ひとりの悩みに応じた治療を受けることができます。
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クリニックでのワキガの治療方法
ワキガの治療として、クリニックでは下記のような方法が行われています。
人それぞれの症状やお悩み、治療法に対する希望などによって適切な選択は異なりますので、ワキガが気になるという方は、まずは医師とじっくり相談してみましょう。
直視下摘除法(剪除法)
ワキガは、原因となるアポクリン汗腺を手術で除去することによって、根本的な改善を行うことができます。
直視下摘除法はワキガ治療として保険適用でも行われている治療法で、剪除法とも呼ばれています
この治療は、脇を切開して皮膚を裏返し、医師がアポクリン汗腺を目視でチェックしながら、一つひとつ着実に除去していくという方法です。
アポクリン汗腺をしっかりと取り除くため、治療後にニオイが再発することは基本的にありません
注意点としては、手術による方法のためダウンタイムが必要になることや、場合によっては切開跡が残る可能性などが挙げられます。
形成外科を取り扱う医療機関であれば保険適用でも対応していますが、より傷跡を目立たないようにしたいなど、治療後の経過や見た目にもこだわりたい方は、美容外科も取り扱うクリニックでの、自費診療での治療がおすすめです。
注射による多汗症治療
汗を大量にかきやすい体質の多汗症は、神経に働きかけて汗腺の働きを弱めるボツリヌストキシン製剤を使用した注射を利用することで治療が可能です。
脇にこの注射を行うことで汗の分泌量を減らし、ワキガのニオイを抑える効果が期待できます
ただし、ボツリヌストキシン製剤はアポクリン汗腺を直接減らすものではないため治療効果は永続的ではなく、半年程度といわれています。手術までしたくないけれど、定期的な注射で臭いを軽減したいという方や、汗をかきやすい夏だけ対策したいという方などに適しています。
パースピレックス
パースピレックスは医療用の制汗剤で、適切に使用すると数日の間、汗腺を塞いで汗を止めることができます。
市販の制汗剤は殺菌などによってニオイを軽減するものですが、パースピレックスは汗の分泌そのものを抑えることができるため、ワキガや脇汗にお悩みの方におすすめです
ただし、使用する際には肌への負担なども考えながら適切に利用する必要がありますので、まずはパースピレックスを取り扱うクリニックで、医師に相談してみましょう。
>>城本クリニックのワキガ・多汗症の手術方法を詳しく知りたい方はこちら
ワキガかな?と感じたら是非一度診察にお越しください
ワキガは突然なったり、治ったりするものではありませんが、医療的な措置を行えば原因をしっかりと取り除いて改善する事も可能です
城本クリニックでは、ワキガの治療に精通した医師が、手術による根本的な治療や汗腺の働きを抑えて長期的に臭いの原因を抑える治療など、さまざまな解決方法をご提案しています
ワキガかもしれないとお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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本コラムの監修医師

1978/04:富山医科薬科大学医学部医学科入学
1984/03:富山医科薬科大学医学部医学科卒業
1984/06:大阪市立大学医学部付属病院研修医
1986/04:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学専攻
1990/03:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学修了
1990/04:田辺中央病院医長
1991/04:城本クリニック
医学博士 / 日本美容外科学会専門医
第105回日本美容外科学会 会長
城本クリニック総院長 森上和樹