わきが・多汗症の手術方法
CONSULTATION 手術方法
現在の日本で行われているわきが・多汗症の手術は、大きく分けて以下の5つに分類されます。
英文字やカタカナを用いた特殊な名称やクリニック独自の新しい治療であるとうたい、高額な費用を請求するクリニックがあるようですが、これらは手術の器具をわずかに変えて独自の方法と称しているケースがほとんどですので、注意が必要です。
直視下摘除法(剪除法)
とても効果が高い方法で、広く行われています。皮膚を3~4センチ切開し、皮下組織内のアポクリン汗腺を目で確認し、これを取り除きます。つまり、手術するドクターが直接目で確認できるのは剪除法だけで、その結果として完治率が高くなります。
しかし一方で、アポクリン汗腺を見分ける経験や知識も必要で、担当する医師の技量でも差が出る手術です。
この直視下摘除法では、左図の層(色がついている部分)のアポクリン汗腺を取り除きます。
皮膚切除法
ワキの下の有毛部の汗腺や皮脂腺、毛根を単に切り取り、縫い合わせるという手法です。
傷が大きくなることと、ひきつれを起こしたり辺縁部に取り残しを発生してしまうことで、ほとんど行われていない方法です。
吸引法
ワキの下の皮膚を数ミリ切開し、そこからエクリン汗腺やアポクリン汗腺を吸引しようとする方法です。皮膚の生着も早く、傷跡もほとんど残らないので考え方そのものは悪くないのですが、不確実なために再発が多く、あまり行われなくなった方法です。
超音波法
超音波を利用し、血管や神経を避けて汗腺のみを吸引する方法です。当初は術後の血腫形成や皮膚壊死などの心配がなく、皮膚の生着も早いことから注目された方法ですが、やけどや組織内水腫の合併症の報告や超音波による熱が皮膚自体にダメージを与えるなど、通常の手術に比べて傷が残りやすいことがわかってきました。
さらに、超音波法は、吸引法の域を超えないので、やや不確実な方法といえます。
ローラーシェービング法(イナバ式)
汗腺を効率よく取るために考案された削除器を使用し、皮膚の裏側より汗腺を除去する方法です。現在でも行われている手術の一つですが、直接、汗腺の残存を確認できないことから、効果という点では直視下摘除法(剪除法)に劣ります。効率重視の場合に使用されます。
吸引・超音波 | 直視下摘除法(剪除法) | |
---|---|---|
方法 | 直接見ないで取る | 直接見て取る |
時間(両ワキ) | 30分前後 | 1~2時間 |
脱毛 | ほとんど効果なし | 100%近い脱毛 |
臭い(ワキガ) | ほとんど効果なし | 効果の高い治療 |
CONSULTATION 手術方法の選び方
わきが・多汗症は、においや汗の量が症状ですので、その強さや量を計って手術前とその後と比較することはできません。
つまり、効果のない手術を受けたとしても担当医がよくなっていると言えば、それに従うしかありません。そのため、手術前にはどの方法がよいか、よく調べて選択する必要があります。
- 剪除法は技術が充分でないとよい結果とならない。
- 手術時間がかかる。
- 手術後の圧迫や経過が長い。
という点で、剪除法を行わないクリニックやドクターがいるようです。
つまり、簡単で楽に手術が終わればよい、経過は短いのがよいと考えていると、再発する方法を選ぶことになります。
剪除法でも再発することがあるのか?
- 技術があり、充分な手術をすれば、再発することはほぼありません。
- 手術担当医が短時間で終わらせようとすれば、技術はあっても汗腺の取り残しが生じ、不十分な結果になることもあります。
『~式、~法』など新しい方法のように宣伝しているクリニック
ご紹介しておりますように、わきが・多汗症の手術には大別して5つしかありません
- これらを組み合わせる2段階式、3段階式など
- 削除器を少し改造した手術名称(~シェービング法)
- 超音波法や吸引法をカタカナ名に変えた手術名称(~ウルトラソニック法、~サクション法など)
このような手術名を聞くと、一見、素晴らしい方法かと感じてしまいます。聞いたことがない方法や、カタカナ名になっている方法は、必ずその内容を調べてから手術を受けるようにして下さい。
CONSULTATION わきが・多汗症の麻酔
ワキの下に局所麻酔(局部麻酔)をします。極細の注射針を使用して局所麻酔をするので、最初にほんの少しチクッとするだけで片側1分程度で完了します。
局所麻酔薬を注射することで末梢神経の伝わりを遮断させ、その部分を麻痺させて痛みを感じなくさせる方法ですが、意識ははっきりしています。小範囲の部分を手術する場合に用いられる方法で、歯科医が行う麻酔と同じです。
手術中は麻酔が効いていますので、無痛の状態です。
CONSULTATION わきが・多汗症の術後処置と経過
わきが・多汗症の手術は、皮膚の裏側を削除するので、一般の手術の縫合では、治りが悪くなります。
このため、タイオーバーと言われる処置が必要となります。4~5日程度、ワキの下を綿で圧迫する作業です。圧迫はしますが、一般の事務職や軽作業の仕事では休む必要もありません。この圧迫を数日で取ります。その後、さらに数日で完全な抜糸になります。
タイオーバー(圧迫)が必要ないというクリニックの場合
完全に汗腺を取らない場合は、皮膚への血行は良好ですので、圧迫は必要ないということになります。
しかし、結果として臭いが残るということになりますので、タイオーバー(圧迫)を必要としない手術は、不充分な手術であると言えます。