城本クリニックの美容外科
CHAPTER 1信頼できる美容外科を探すなら手術法に注目!
本書は1999年に書かれたものですので、年号表記や現在の治療内容等が異なる場合があります。
城本クリニックの美容外科 美容外科最前線
発行:株式会社千早書房(1999年3月4日)
3か所以上のクリニックを訪れて直接相談しよう
美容外科を訪れる人はなにを基準にしているのでしょうか。
手術のうまい、へた? 病院の設備? それとも、信頼できる医者かどうか? いずれも関心のあることでしょうが、どうやってそれを判断していいのかわからないというのが一般の人に共通する思いでしょう。
自分の希望を叶えてくれるぴったりの美容外科を何とか探したい! と思っても、結局は雑誌やテレビの広告しか頼るものがない、というのが現状です。当クリニックを訪れたきっかけを尋ねれば、最も多いのは、「雑誌の広告や記事を見て」というものです。
美容外科の性質上、一般には誰かに相談することが難しいということが理由に挙げられます。もちろん、美容外科に関する意識も変化しており、当クリニックのようにロコミで訪れるという場合もないわけではありませんが、そういう場合は、手前味噌になりますが、かなり信頼されている美容外科だと言えるのではないでしょうか。
雑誌を開けば、美容外科の広告が氾濫しています。あきらかに過当競争の時代に入ったといってもよいでしょう。本来ならば、技術が優れ、良心的な美容外科が残り、技術が劣ったり、非良心的なところはなくなっていくのが、経済の原理です。
ところが、残念ながらそうではないのが現状です。むしろ確信犯的に医療法違反を犯しているような派手な宣伝広告を大量に出しているところに患者さんが集まっているのです。
大手のチェーン店形式のところでは、全国規模で広告を出しています。その費用はといえば、驚くべきことに自動車や家電メーカーなどの大企業並みで、年間何十億円と言われています。もちろんどれほど広告費用をかけようが自由ですが、この広告費は間違いなく治療費に上乗せされていると考えるのが常識ではないでしょうか。また、あるいは必要もない手術を無理に勧めるということにならないでしょうか。
しかも、一部のチェーン店形式の美容外科では、実際に医療に携わるスタッフ以外の社員も多く、場合によってはオーナーが異業種から参入していて、企業として美容外科を経営しているところさえあります。
こうしたところでは、当然のようにもうけ主義に走ることになります。手術さえ行えば日銭が稼げるわけですから、営業活動は熾烈になります。逆に手術がなければ、雇った医者を遊ばせておくことになりますから、なにが何でも訪れた患者さんを手術に持ち込むということすら考えられます。こういうところは患者本位ではなく、病院本位の理論で経営されていると言わざるを得ません。
では、医師一人で、一か所の医院で、コツコツと手術をしているところがいいかというと、必ずしもそうではありません。どんな手術も一人ですることになってしまうのは問題です。美容外科の手術は、いずれも困難手術ではないとはいえ、非常に多岐にわたるものです。一人でやっていれば、自分の不得手な手術まで行うことになってしまいます。
現時点では、宣伝広告を目安にするしかないとしても、広告だけを頼りにしないでください。広告を見て、電話だけで相談するのではなく、直接カウンセリングに出かけて自分の目で見て、耳で聞いて判断してください。また、決して初めて訪れた美容外科で、手術を即断することだけはやめてください。決断する前に少なくとも三か所以上の美容外科を訪れることをお勧めします。
三か所以上訪れれば、必ず信頼に足る美容外科に出会えるというわけではありませんが、少なくとも、美容外科の仕組みや自分の受けたい手術法に関する知識が増えることは確かです。それにより、判断する材料が増えれば、より信頼できる美容外科を探す手がかりが掴めるのではないでしょうか。
○○式手術法という名前に惑わされるな
美容外科の技術も他の医療技術と同様に日進月歩です。そこでは、一人ひとりの医師が毎日の手術でいろいろの工夫をするなど、たゆまぬ研鑚を積んでいることも確かな事実です。また、たとえば、レーザー治療のように、機器が画期的な進歩を遂げることもあります。
しかし、いずれにしてもこのような場合には、当然、美容外科学会などに発表され、それが本当によいものであれば、直ちに普及します。医療行為ではその技術の特許をとることなどは許されていません。より多くの人々の幸福のために行われる医療には秘密があってはならないのです。あくまでも公開されることが原則なのです。
したがって、現在の美容外科の中でも、最も多く行われている目や鼻の手術は、どんな美容外科もほとんど同じ材料を使って同じ方法で手術しています。
ところが、例えば鼻を高くする手術で、〈○○クリニックが独自に開発した人工軟骨を用いる「○○式ナチュラルノースメソッド」〉という言葉が宣伝広告などに使われていたら、単に「隆鼻術」というよりも、今までと違ったより良い手術ではないかと錯覚してしまいそうです。美容外科に明るくない一般の人ならそう思ってもしかたがありません。
どこの医師でもそれぞれ工夫をして手術をしていることは先にも述べました。それを大げさに『独自に研究した』とか、クリニックの名前をつけて『○○式、○○法』とか、あるいはただ、英語やカタカナに置き換えて錯覚させているわけですから、詐欺的な商法だといってもいいのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、目や鼻の手術は、確立されたほぽ定型の手術であり、美容外科医にとっては、難しくはない当たり前の手術なのです。もし、このような詐欺的な広告を載せているクリニックが『○○式』だからということで特別の料金を設定しているとしたら、それは患者さんを馬鹿にしているとしか思えない行為です。
まるでファーストフードの店のような美容外科も存在する
目の手術にしても、胸の手術にしても、一種類の手術法しかないということはありません。患者さんは一人ひとり、年齢も違えば、体つきも顔つきも違って当たり前です。いくつかある手術法の中から、いちばんその患者さんに合った手術法を選んで、納得の上で行うのが最も適切な方法ではないでしょうか。
ところが、大手のチェーン店形式のところでは画一的な手術法がとられているのが現状です。それはまるでファーストフード方式ともいえるようなものです。
ハンバーガーショップなどのファーストフードの店でアルバイトを経験した人にはよくわかると思いますが、そういうところでは、誰がやっても、同じ程度のものができるようにシステム化されています。徹底して無駄を省き、クレームをなくすために、出来上がりも均一を目指すわけです。
こうした方法をとれば、たった一つの手術法を教え込むだけでよいため、効率も良く、さらに熟練の腕を必要としないため、研修医程度の腕でも手術が可能となるわけです。実際に大手のチェーン店では、大学を出たばかりの外科の臨床経験の少ない研修医でも、立派に常勤医師として雇われ、実際に手術を行っています。患者さんには医師の外見以外には、見分ける手だてがありません。
さらに、こうした美容外科では、同じ簡単な手術しか行う機会がないため、技術の進歩に限りがあります。何年勤めても、美容外科医としてのテクニックを磨くことができず、将来独立を考えていてもその夢が叶わないということになります。もちろんそれも、ライバルのクリニックを作らせないという点に置いて、願ったりかなったりなのです。
しかし、例えば、小鼻が大きいので、小さくして鼻の形を整えたいという希望の患者さんが来ても、「高くすればバランスがとれ小鼻の大きさは気にならなくなります」と強引に安易な隆鼻術を勧めるとしたら、みなさんはどう思われますか。冷静に考えればとんでもないことだとすぐにわかりますが、初めて行った美容外科で、医者から強引に勧められれば、冷静な判断などできないかもしれません。
良心的とは言い難い美容外科が、一種類の手軽な手術法しか用いないという点については、もっと大きな理由があります。手術が簡単だということは、メスで切ったりする量が少なく、手術時間も少なくてすむということです。そのため、術後もあまり腫れたりせず、傷跡も目立たないのです。
腫れず、目立たないとなれば、手術後、思ったような効果がないとクレームを付けられることがあっても、傷跡や後遺症などで訴えられる危険性がきわめて少ないといえるのです。
思ったような効果がないというクレームなどは、主観の問題だと言い逃れることもできますが、歴然とした傷跡や後遺症があれば、訴訟などにおいて不利な状況に追い込まれます。簡単な一種類の手術法しか、取り入れていない美容外科では、クレームや訴訟のことまでも視野に入れ、組織を挙げて効率化に励んでいるというわけです。
シワの取れないシワ取り手術が横行している!
シワを取る若返り手術にフェイスリフトという方法があります(次章で詳述)。簡単に言えば、皮をはがして、引っ張ることでシワを伸ばし元通りに縫い合わせる手術です。
言葉で言えば簡単ですが、薄い皮胄をはがすだけでなく筋肉などにも手を加えなければならず、手間もかかり、術後もすぐに、仕事などに復帰できるわけではありません。当然しばらく腫れも続くし、手術の際の麻酔も場合によっては、全身麻酔をかけざるを得ません。しかし、本来のシワ取り手術とはこういうもので、ちゃんと行われたものなら、5年、10年、あるいはそれ以上の単位で、効果は持続します。
ところが、キズ痕も小さくて、ほとんど腫れないなどといっているシワ取り手術は、効果があったとしてもせいぜい3か月で、シワ取りといいながら、実際にはシワが取れないのです。皮膚をわずかな間隔で切除して、その間分だけ皮を引っ張る単純な手術ですが、一応シワが少し伸びるため、成功したと思わせてしまえるのです。クレームが来ても、「痩せたからですよ」とか、「日光にあたりすぎて日焼けをしたからです」と言われれば、裁判をしても勝ち目はありません。
ワキガは100パーセント治らなければ意味がない
ワキガの手術でも、困った手術法がまかり通っています。 「傷跡は残りません。9割方良くなります」と謳っている美容外科があります。
9割も良くなればいいのでは、と思った人もいるのかもしれません。が、そういう人はすでにだまされているのです。ワキガのいやな臭いは、元となるアポクリン腺という汗を出す組織を、完全に取り除かねば消すことはできません。たとえ、9割取り除けたとしても1割残っていれば、臭いは取れないのです。
臭いの性質を考えてみればすぐにわかります。例えば、すりつぷしたニンニクを100グラム用意してガラスケースの中に入れたものを嗅ぎ、ついで90グラム取り除き、10グラムを残したものを嗅いで、比べたとき、後者の方が臭いが取れたといえるでしょうか。どちらも同じように臭うはずです。
確かに9割取れても、当人にとっては少しも良くなっていないのです。ところが、それを理由にクレームをつけても、臭いが残っていると言うだけでは、裁判で訴えても通りません。逆に、臭いが消えても、ひどい傷跡を残した場合には、それはそれで訴訟の対象になってしまいます。つまり、患者が完治しなくても、自分たちが訴えられなければそれでよしとする態度なのでしょう。
さらに、このような効果のない方法でも、手術の影響でワキの下の発汗が一時的に抑制されることがあります。つまり手術後1か月から6か月ぐらい一時的に臭いがしなくなることがあるわけです。この時期を過ぎて、手術後1年ほどたって、臭いが再発したとその美容外科に訴えても「ほとんど問題がない。あなたが気にしすぎるだけだ」と言われ、相手にしてもらえないでしょう。こうした問題のある手術法の代表的なものが、一般に吸引法や超音波法などと呼ばれるものです。
どんな手術で行われるかを患者が把握していれば問題はないのですが、ほとんどの美容外科が、○○法とか、○○式、あるいは他の二、三種類の方法で行っていると言っているため、患者の側からはっきりと見極めることは難しいかもしれません。
そこでトラブルを防ぐために、手術前に、『万一、再発した場合は、薬代も含めて無料で、再手術をしてもらえる』ことを、できれば書面で約束してもらうことです。
ただ再発と言っても、医師側と患者側で捉え方に差があると、問題がこじれてしまうので、『患者が臭いが気になるので、再手術を希望する』と患者サイドの判断で決めることができる約束をすることが肝心です。
脂肪注入による豊胸手術のワナ
余った脂肪を吸引して取り除く痩身法は美容外科独自の痩身法で、脂肪吸引法とか、脱脂法などといいます。取り出したその脂肪を胸に入れて胸を大きくできれば、一石二鳥ですばらしいと思うのは患者さんばかりではありません。医師なら当然考えつくことでしょう。実は、すでに100年以上も前に実際に試みられています。しかし、残念ながらこの方法は、効果がないと見捨てられた非常に稚拙な方法なのです。
脂肪は粘土細工のようにくっつくわけではなく、血液から栄養をもらわなくては生きていけません。結果として、大量に注入された脂肪はやがて壊死し、組織にほとんど吸収されてしまうのです。
脂肪を注入した後、胸が大きくなるのは、ちょうど手や足を打撲すると、腫れてふくらむのと同じで、胸が一時的に腫れている状態なのです。
さらに問題なのは、脂肪が吸収されてしまうだけではなく、硬い〈しこり〉として残ることがあるということです。このしこりは、見栄えだけの問題にとどまらず、乳ガンなどの乳房腫瘍の診断と治療の妨げとなってしまいます。
しかし、多くの医師が、患者が満足するふくらみを持たせることができないと考えていても、一部の医師は「特殊な」とか「独自の方法で開発した」などと言って脂肪注入を続けています。中には、「脂肪を選んでいるから吸収されずに、定着する」と言っている医師もいますが、どこの脂肪でも脂肪は脂肪ですから、違いなどありません。脂肪を選ぶことなどナンセンスだと言わざるを得ないでしょう。
もし患者が「入れた脂肪は吸収されてしまい、バストが元通りになってしまった」と、6か月後くらいにその医師に相談しても。「少しくらいは残っているはずです。脂肪は一部吸収されると説明したはずです。ただ、あなたは少し吸収されやすい体質ですね」と言われておしまいです。
それでも、どうしても脂肪注入で豊胸手術を行いたいというのであれば、2年後でも確実に胸が膨らんでいる状態、第三者が見ても胸が豊かになっている状態であること、もし、吸収されていたなら十分に大きくなるまで再手術、あるいは生理食塩水バッグ(生食バッグ)を用いた再手術をしてもらえる』
以上のことを約束してもらってください。たぶん保証してもらえないでしょうが、それはとりもなおさず吸収されるという証明に他なりません。逆にどんな美容外科でも生食バッグの豊胸術では1年後も膨らんでいる保証をしてくれるでしょう。
生食バッグを入れる方式にも二種類あること、生食バッグが完全に問題のない手術であるかと言えばそうではないことなど、次章で詳しく述べることとします。
脂肪吸引は取る場所、範囲をはっきりと確認する
脂肪吸引に関しては、「取れる場所と取れない場所がある」と言う医師がいますが、これはおかしいと思ってください。
「血管が通っているから」とか、「大事な神経を傷つけるといけないから」というのは正当な理由ではありません。基本的には手の甲などの皮下脂肪の薄いところは別として、どこの脂肪でも取ることが可能です。もちろん取ることができても、効果が少ないところはあえて手術をする必要はないでしょう。
取りやすいところだけを取るために、取れる場所を限定しているようなところで脂肪吸引を行うと、必ず後悔することになるでしょう。なぜなら、そういう美容外科では、太股の内側とか、ふくらはぎの一部とか取りやすいところに限定しているため、結果として偏って脂肪をとることとなり、満足できるような仕上がりにはなりません。
なぜ、「取れないところがある」と言う美容外科があるのかといえば、事前にトラブルを回避するためにほかなりません。手術もラクで失敗がなく、トラブルも起こさないことが、彼らの一番の関心事だからです。
例えば、太股の吸引を行う場合なら太股の内側だけでなく、外側や前後、膝の周囲なども吸引しなければ、バランスよく脂肪が取れたという印象にはなりません。
事前に吸引する場所と量をハッキリと確認しておくことが大切です。また、取れるだけ取るのではなく、適度に残す方が仕上がりをきれいに見せます。私たちは多くの経験からも1割から2割残すようにしています。もちろん、どこをどう残すか、そのさじ加減は、手術をする医師の腕次第というところです。